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研修医日記/医療法人社団 札幌皮膚病理診断科
Sapporo Dermatopathology Institute
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高井利浩/研修医日記(2月)
2月4日
今朝からいよいよ札幌での研修が始まる。僕の住むアパートかから研究所は地下鉄でひと駅である。歩けば歩けそうな距離なのだが、2月ではまだ道が凍っていて歩きにくい。当分は無理をせず地下鉄を利用するとしよう。さて、研究所というのは3階建ての建物で、中もそれなりに広い。2階に検鏡室と木村先生、倉園先生の各部屋があり、3階には研修医室がある。研修医といっても、しばらくの間は僕一人なのだが。部屋も独り占めだ。木村先生の朝は早い。7時半から組織検討が始まるのだ(組織検討のことをリーディングと木村先生は言う)。初日なので必死で顕微鏡をのぞいていたらすっかり目が疲れてしまった。お昼前からは木村先生と北海道大学の医学部の病理部へ行き、免疫染色の見方などについて意見交換。かなり近くなので歩いて行くのだ。研究所に戻ってからホカ弁で昼食を済ませ、またリーディング。眼精疲労が限界に達する頃、夕方になっておしまいとなった。


2月5日
今日も朝7時半からリーディング。そして昼前に昨日と同じく北大病理へ。しかし、木村先生について歩くのは、なかなか苦労する仕事である。何しろ、歩き慣れておられるので歩くのが速い!しかも木村先生は割と背が高く、僕とのコンパスの長さの差は歴然としている。スタスタ歩いて行く先生の後を、「ま、待ってくださいよお-」とばかりに追い掛ける。うっかり八兵衛にでもなった気分である。ちなみに木村先生は背が高いだけでなく、顔だちもはっきりした外人系の雰囲気で、いかにもやり手の親父、といった風貌なのだ。さて、お昼は木村先生と二人で蕎麦屋ですませ、研究所にもどる。午後もリーディングを見学しつつ、色々と教わる。一日に40から50例くらいは見ているから、結構な数だといえる。精力的な木村先生のことだから、これからも仕事は増えていくのだろう。


2月6日
水曜日は昼から北大病理でウィークリーレビュー、そのあとに北大皮膚科のカンファレンスに参加させていただく。他大学の皮膚科のカンファに出られるというのは仲々ないことなので非常に楽しみにしていた。参加できるよう計らって下さった木村先生と、参加を認めて下さる北大皮膚科の清水教授には大変感謝している。本来、北大とは何の関係も無い人間に研修の場を与える義理はないわけで、ありがたさに手を合わせつつ勉強したいと思う。さて、実際出てみて感じたのは、北大の検討会はかなり活発で内容も充実している、ということである。まず、一人一人がよく準備、勉強していて、質疑応答も全体のレベルが高い。というのも、よそ者の僕には誰が一年目の研修医なのかがまるで判らなかったのである。さらに、清水教授も積極的に討論に参加され、鋭い意見をいくつも出しておられた。深読みすれば、清水先生はよそから来た僕がいたので力が入ったというのもあるかも知れない。しかし、それを最大限に割り引いたとしても、内容の濃さは充分だった。ただ、その後に特別講義が2枠続き、さすがに少し疲れた僕であった。


2月7日
木村先生によれば、木曜は検体数も少なく、割とゆっくりできる日なのだそうだ。もっとも、そのつもりでやっていたら午後は少し忙しくなり、他の曜日と変わらない数の標本を見たような気がしたが、、、研修医に教えるという仕事が増えて、木村先生も勝手が違うのかもしれない。


2月8日
今朝もリーディングから一日が始まる。この、朝から組織を見るという生活に、やっと少し慣れて来ただろうか。そして今日も、お昼前の北大病理詣でをする。木村先生いわく、「散歩みたいなもの」らしい。確かに、往復で15分くらいの行程だし、ちょうどよいかも知れない。一日中すわって顕微鏡に向かっているというのは、どう考えても体に悪そうではある。帰りに回転寿司に寄って昼ごはんを済ませた。これも外回りの利点かも。でないと毎日コンビニ弁当の昼になってしまう。さて、午後は勤医協中央病院皮膚科のカンファレンスに行く。木村先生が独立前に勤務していた病院で、皮膚科の外来がかなり立派なのが印象に残った。夕方に研究所に戻り、一週間が終わったことになる。これまでになく勉強になっているのは間違いないが、慣れない生活で少し疲れた一週間でもあった。週末の連休に雪祭りにでも見に行くとしよう。


2月12日
ここでの研修も2週目に入った。リキまずに顕微鏡をのぞくコツを覚えてきたのか、眼が疲れることはなくなってきた。研修中の検討テーマも決まり、かなり方向性が見えてきた気がする。あと、雪道にも慣れてきたので、地下鉄をやめて徒歩で通うことにした。札幌というところは道が格子のように走っていて、町の中心部では交差点の地名が「北22条西4条」という具合に表示されている。これは大変にありがたい。なにせ、僕はひどい方向音痴で、初めて訪れる場所では必ず迷ってしまうのだ。しかし、この方式で地名が書いてあれば、いくら方向感覚に乏しくとも、自分がいまどちらへ進んでいるのかが簡単にわかる。それはいいのだが、今日は朝から雪が降ってて、足をとられて歩きにくかった。まあ、頑張って歩くとしよう。


2月13日
午前に北海道大学の病理部を訪れた帰り、木村先生と、カレーを食べた。木村先生お勧めの店であった。ただ、12時前に店に着いたときはまだ開店しておらず、準備中だった。僕たち二人が待っていると、さらに、若いにいちゃんの二人連れがやってきて、彼らも開店待ちをし始めた。パチンコ屋の開店前みたいな状態で待つこと10分、やっと準備中の看板が外された。ついにありついたカレーは、スープカレーというのか、さらさらのルーがかかった奴だ。スパイシーで、なかなかの味であった。この界隈には色々とお勧めの店があるらしく、札幌にいる間にあちこち行くことになりそうだ。そして午後は、先週と同じく北大皮膚科のカンファレンスを見学させていただく。今週は症例検討会の後は特別講演はなく、報告会をされていた。いずれも自分の興味のある分野の話題で、大変興味深く聞くことができた。


2月14日
最近雪がよく降る。寒いのはまあ我慢できるが、雪が降るというのは歩きにくいし、服や荷物に雪が積もって大変である。しかし、札幌では、多少の雪では傘をささない人が多い。慣れているからなのか?まあ、雪の度に傘をさしていたのでは、毎日傘を持って歩かないといけなくなってしまうが。地元の人に聞くと、あとひと月くらいで雪はなくなるとのことだ。


2月15日
今日は夕方から、研究所の面々でコンサートに出かけた。中島公園というところある、なかなか立派なホールであった。メインは二胡という中国の楽器で、胡弓ともいう。もう一種類の中国の楽器と、ピアノとの協奏で10曲くらい演奏していた。演奏者は、かなり日本でも広く活動されている有名な方らしい。ゆっくりと音楽を楽しませていただいた。途中で少し寝たが。木村先生によると、三ヶ月に一回くらいの割で、こういう文化的なイベントもやりたいとのことである。


2月18日
研究所でリーディングする検体の数も順調に増えており、一日に80例を越す勢いである。もちろんcommon diseaseも多いのであるが、それも大事なステップといえる。 common diseaseを多くみておくことで、uncommonな疾患を引っ掛けていくことができるようになる。common diseaseのバリエーションを理解していないと、その範囲をはみ出たものに反応できないのだ。これは、皮膚科の日常診療にもいえることだろう。多く見ていることは、それだけで一つのメリットになるのだ。また、木村先生が、本に書いていない、または書いてあってもニュアンスの掴みにくいポイントをよく教えてくださるのも非常に勉強になる。リーディングの速度を落としているのはまちがいないが、せめて木村先生に教え甲斐をかんじさせるくらいの生徒になるよう、頑張ろう。


2月19日
リーディングをしていない時間は、自分で勉強をする。今やっているのは、疾患を絞って標本を出してきて、通して見ていくというやり方。普段ではたまにしかお目にかからないような疾患の組織を、この時とばかりにいくつも見て、しっかり憶えてしまおうというのだ。あまり欲張ると散漫になって所期の目的を逸するので、なるべく種類を絞り込むか、関連する疾患や鑑別が難しい疾患でまとめて見る。標本が完璧に整理されているおかげで、こんな方法も可能なのだ。研修医部屋にも顕微鏡があるし、いくらでも組織をみることができる。恵まれた環境という他ない。見過ぎると涙目になるけれども。


2月20日
今日は木村先生は出張で、研究所におられない。リーディングはお預けだが、ゆっくりと自分で組織を見たり勉強をすることにする。まだ研修医は自分一人なので、研修医室にCDラジカセを持ち込んで、適当に音楽など聞きながら勉強している。もともと「ながら族」という奴で、全く静かなのよりはその方が能率が上がるのだ。夕方は例によって北大皮膚科のカンファレンスへ行く。今日はじめて一人で大学へ行くが、迷いようもない、判りやすい近い道のりである。いくら僕でも迷わない。はずだったが、大学の敷地に入ってから少し迷ってしまった。


2月21日
木村先生が昨日出張されていたので、今日はリーディングする組織の数が多い。基本的には、結果はその日のうちに返さなければいけないので、けっこう大変な仕事である。まあ、僕は一介のゲストに過ぎないので、傍観者的な見方になるし、お手伝いできることなどほとんどない。せめて、邪魔にならない様に、、、、。質問などはもちろん遠慮なくするが、あまりアホな質問で木村先生の腰を砕けさせるようなことはするまいと思うのであった。


2月26日
あいかわらず標本の数は多い。今までは滅多にお目にかかっていないような疾患が、月に2例も3例も見られたりして、これは凄い利点である。何例も見ると、バリエーションも判ってきて、その疾患に対して苦手意識もなくなるし、本で復習するときも「確かにこういう所見があると書いてあるけど、このくらいでそう解釈できるんだろうか?このくらいで十分なのかな、もっと強いことが多いのかな?」などと考え込むことも減る。木村先生も、とにかく数をみてパターンを掴んでいくことで、診断に迷う症例を見たときの判断力になっていくのだ、と強調されている。実際、多くの組織を見てきたからこそのポイントを多く知っておられるし、経験あればこそ、という着眼点も鋭い。知れば知るほど奥深い、頂上は存在しない、という分野なのだろうか?僕などは駆け出しもいいところで、まさに洟垂れの小坊主とでもいう未熟者、頑張らねば。


2月27日
水曜は午前に病理部の検討会、午後に皮膚科の検討会と、一日に二回、北大へ行く事になる。皮膚病理を日々見ていく中で、病理の先生方や臨床家の皮膚科医と意見交換をする場があるというのは大変有意義なことだ。臨床病理の先生からは血液系疾患や間葉系腫瘍についてのアドバイスをいただける。このあたりの組織所見については、普段から見慣れておられる病理の先生が詳しいことも多い。北大皮膚科のカンファレンスに出席することは、木村先生にとっては臨床の先生との討論の場になるが、僕にとっては純粋に臨床の勉強という意味でも大きい。病理ばかり勉強していたら、臨床を少し忘れて行くかも、とも思っていたが、北大のカンファレンスに出るおかげでそんなことはまったくなく、むしろ臨床面でも知識をつけることができている。一日に二度、足を運ぶだけのことはあるのだ。


2月28日
午前中、研究所のもう一人のスタッフの倉園先生と、北大の病理部の標本作成のプロセスを見学に行ってきた。倉園先生はそんなプロセスは十分に知っておられるのだが、それについて今度ミニレクチャーの様なことをするので、それ用の写真撮影などをされるのだ。僕がそれにくっついていって、見学させていただいたのである。今日は染色をされるのは午後になるとのことだったので、薄切するところまでの見学となった。TVなんかで、よくお笑い芸人が職人の仕事を取材に行ったりしているが、あんな感じで職人技に感心しながら眺めているのであった。TV番組みたいに「あんたもやって見ますか?」とは言われなかった。まあ、言われても困るが。
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高井利浩/序章
高井です。平成9年神戸大学卒、皮膚科入局して5年目になる者です。ここでは、札幌皮膚病理研究所に2月から研修医としてやって来た僕の、日々の生活を書いてみたいと思います。
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