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研修医日記/医療法人社団 札幌皮膚病理診断科
Sapporo Dermatopathology Institute
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福本隆也/第42回アメリカ皮膚病理学会参加記
今年のASDP(American Society of Dermatopathology)のAnnual meetingは10月の20日から23日までシアトルで行なわれ、今年も幸い参加することができました。学会のアウトラインについては前回の参加記を参考にしていただければと思います。


2005/10/20
今回は11時半からレジストレーション開始と前回の16時より早くなっていました。ポスターを貼ろうと思うと、自分の番号のところに既に誰かのポスターが貼られています。うろうろしていると、ポスターの数が多かったためか、前半と後半の2つに別れたことがわかって、調べると、僕のは後半でした。13時から、Behind the H+Eというコースがあって、4人の演者によるいろいろな皮膚疾患の遺伝子的な背景についての講演です。最初は、色素細胞性母斑の話で、多くの露光部のメラノーマや後天性の色素細胞性母斑では、BRAFの変異がみられる。それでは、日光にあたっていない、先天性色素性母斑ではどうかというと、BRAFの変異がなく、NRASの変異が高頻度にみられる。さらに、いわゆるcongenital patternといわれる分布を示している母斑で、病歴で生下時からはあったとは確認できなかったものを調べると、BRAFの変異が高頻度にあり、NRASの変異があったのは1/4程度だったとのことでした。演者は、congenital patternを示す母斑も日光曝露が関与した後天性の母斑ではないかと言っていました。次は、境界型皮膚炎(interface dermatitis)についての講演で、主にサイトカインに焦点をあてていました。その次はメラノーマの発症におけるMicrosatellite instability(MSI)の果たす役割について、最後に肉腫における遺伝子発現のプロファイルについて、でしたが、いずれも内容が結構複雑で、英語ということもあって、ついて行くのが難しかったです。

ASDPseattle1022.jpg
ポスターもきれいに出来上がった


15時からは、Self Assessment Aへ。Self Assessmentは一回に100人ずつで、顕微鏡の前に座って順番に標本をまわして、自分で診断をつけていきます。全部で50題あって、1枚を2分で次の人に回していきます。去年とくらべると結構、わかるものも多く、結論は出せなくても何が診断上の問題なのかがある程度わかって、去年のように全然わからないというものは少なくなりました。といっても難しかったですが。夕食は松原先生と中華へ。アメリカの食事は甘い味つけが多いように思いますが、ここはスープを除いては大丈夫でした。

18:30からは、Duelです。これはfellowやresidentが1時間ちょっとのあいだに12題の発表をして、最終日に賞が与えられるのですが、fellowやresidentとはいえ、みんな堂堂とした発表でした。内容も興味深いものが多いのですが、眠気もあってあんまり覚えていません。

20時からはLessons from Lumps: Cases you cannot forgot(Despite Trying)という講演。5人の有名な先生が診断の難しかった腫瘍性病変について講演しました。これは面白かったです。LeBoit先生はDesmoplastic melanomaの表面をshaveされた検体の話で、濃染核とケロイド様の線維化のある病変は要注意という講演、Cerroni先生はAtypical spitz tumorの、Elder先生はRecurrent nevusの、Smoller先生は、最初の生検がびまん性の好中球主体の炎症で肉芽腫性炎症がなかった非定型性抗酸菌症の、Glusac先生は表皮の肥厚と色素増強をともなったCutaneous leiomyosarcomaの話をされました。どれも診断上の落とし穴について触れたもので興味深く聞くことができました。


2005/10/21
時差のせいか朝早く目がさめてしまいます。学会は朝6時半からです。フロアにおいてある朝食をとって、ポスターを見てまわります。

ASDPseattle1023.jpg
ASDPポスターの前で


8時からShort Course Iを聴講。これは、Neglected topics in Dermatopathologyというタイトルで、熱帯地方の皮膚病理、爪の皮膚病理、色素異常の皮膚病理、組織球症の4つの講演でした。Tropical Dermatopathologyは主にMycobacteriosisについて症例紹介の形の講演でした。爪の話は、爪は見なれないので難しいという話ではじまって、生検のし方、検体の取り扱い、解剖、そして、感染症、炎症性疾患、色素性病変と盛り沢山でした。最後のほうは時間が足りなくなりました。この講演は、UCSFのRuben先生がしたのですが、爪の色素細胞性母斑の症例が、私達が、UCSFのLeBoit 先生にコンサルテーションした症例のようで、ちょっと嬉しくなりました。色素異常の話はLeBoit 先生が総論的に話されました。Histiocytosisの話はGlusac先生が症例を提示して考えていくというスタイルでLangerhans cell histiocytosis, congenital self healing histiocytosis, Juvenile xanthogranuloma, Multicentric reticulohistiocytosis, Reticulohistiocyotma, Xanthoma disseminatum, Benign cephalic histiocytosis, Rosai-Dorfman disease, Leprosy, Epithelioid cell histiocytosisなどを紹介されました。
Box lunch(でかい!) のサンドイッチをもらって、Oral sessionを聞きます。たとえば、NKI/C3はCellular neurothekeomaのマーカーとして知られているが、調べてみるといろいろな腫瘍や正常組織でも発現されるので特異性は低い、とか、Syringomatous adenoma of the nippleとMicrocystic adnexal carcinomaはHE染色では非常に類似しているが、免疫染色では異なったマーカーを発現し、異なった腫瘍である、とか、FXIIIaはどの程度有用なのか、など皮膚の診断病理にとって面白い話がたくさんありました。

14:30からはElson B. helwig Memorial Lectureで、先日電顕皮膚生物学会で札幌にもこられた、Graz大学のLorenzo Cerroni先生のlymphomaの講演を聞きました。
15:30からは最初のPoster defenceセッションです。質問をしようと思っていたポスターのところへ行きましたが、演者は不在。結構、その場にいない先生も多いようです。

夜はPresident's Reception & Banquetがあるのですが、今回はパスしました。食事をしてホテルで休んでから、Slide libraryへ。教育的な症例100例を順に見ていきます。この日は1/3くらい見ました。ポスターもこのとき貼りました。


2005/10/22
朝はやはり6時半からです。夜のEvening Slide Seminarの標本15例を前もってみておきます。今年はASDPのWeb site(http://www.asdp.org/index.html)にEvening Slide Seminar の顕微鏡写真とヴァーチャルスライドが載せられていました。ヴァーチャルスライドは顕微鏡を見ているかのように好きなところを拡大してみることができ、画期的だと思います。

8時から12時までは一昨日のSelf Assessmentの解説。5題ずつ出題したDrが解説していきます。午後は13時半から、Hermann Pinkus Memorial Lecture。UCSFのBastian先生がメラノーマの遺伝子解析の話をされました。メラノーマの遺伝子変異はいくつかのグループに分けられ、紫外線曝露と関係した群と関連しない群ではそのパターンが異なるというような話でした。2時半からはPresidentユs addressで、Kamino先生が、アメリカの皮膚病理の現状と展望のような話をされました。通常の皮膚病理診断の検体は大学から一般のLaboへ移っていっていて、大学の検体が減ってきているのだそうです。皮膚病理の研修は、一定期間laboですることも必要だろうとか、いろいろ話されていました。Kamino先生は再来年の札幌皮膚病理セミナーの講師なので、ご挨拶しておきました。札幌から来たというと、私、来年札幌へいくの! とうれしそうに行っておられました。

15時からは口演2があるのですが、ポスターを見ておきます。今年は、日本からは埼玉医大の先生方のほか、熊本大学と大津市民から演題が出ていました。
16時からPoster defence。ポスターのそばに立っていましたが、簡単な質問やコメントをもらいます。Resnik先生には論文にするようにいわれました。20分くらいで切り上げて、12月の札幌皮膚病理セミナーに来られるGottlieb先生のコンサルテーションセッションへ行きます。テーマはmelanoma or not です。遅刻をお詫びして、顕微鏡につきます。参加者が順番に持ってきた標本を出してGottlieb先生が丁寧に解説していきます。僕も一例見ていただきました。このセッションではオーストラリアのBish先生がいっしょで、木村先生は来てないのかと聞かれ、あれこれお話しました。このセッションだけでなく、知っている先生にはごあいさつしたのですが、Tetsuは来てないのかとか、よろしく言っといてくれとかあちこちで言われました。

18時半からEvening Slide Seminarです。朝から見ておいた標本の解説がありました。
このセッションではビールと簡単なおつまみがついています。シアトルもいくつか地ビールがあって、どれも大変美味しいです。アメリカのビールは大味という印象がありますが、地ビールは美味しいです。ビールを飲むと去年と同様に、途中から猛烈な眠気が襲ってきてかなりの部分寝てしまいました。終了は21時半。気を取り直して、Slide libraryへ。


2005/10/23
学会最終日です。この日は午前中だけです。
朝からSlide libraryへ行ってまだ見ていない標本を順番に見ていきます。せっかくの機会なので頑張ってなんとか全部見ました。のこった時間でShort Course IIIを聞きます。ちなみにShort Course IIは、Vulvar and Genital pathologyでしたが、これは、self assessmentの解説と重なっていて聞けませんでした。最後のコースは脱毛症の皮膚病理で、瘢痕性脱毛症、円形脱毛症、CPC、transverse sectionの落とし穴の4つの話があり、最後の2つを聞くことができました。検体を水平切りにして毛包を評価することは日本ではあまりされていないと思いますが、メリット、デメリットがあるようです。


2回目の学会の印象ですが、皮膚病理組織診断という目的にそった発表、コースやセッションがたくさんあるのがやはり、すばらしいと思いました。遺伝子のような話ももちろん沢山あるのですが、病理標本からいかに診断していくか、いかに診断能力を向上させるか、病理診断上の落とし穴は何か、など診断学としての皮膚病理がメインだと思いました。日本にこの様な学会がないのは残念なことです。
ASDPの第43回のmeetingは2006年はシカゴで10/26~29にあります。来年も可能なら是非、また参加したいと思います。
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