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研修医日記/医療法人社団 札幌皮膚病理診断科
Sapporo Dermatopathology Institute
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福本隆也/Ackerman Academy of Dermatopathology研修記
今回、2006年4月24-5月19日の4週間、ニューヨークのマンハッタンにあるAckerman Academy of Dermatopathology(以下Academyと略します)で研修することができました。

1998年の札幌皮膚病理セミナーでAckerman Drの講義を聞いてから、皮膚病理に興味をもって勉強してきましたが、英語が苦手なこともあり短期間とはいえAcademyへ皮膚病理研修へ行くことになるとは思ってもいませんでした。昨年12月の札幌皮膚病理セミナーで、現在のAcademyのDirectorであるGeoffrey J Gottlieb Drがこられて、素晴らしい講演やコンサルテーションをされたことと、その暖かい人柄に触れたこと、札幌で経験を積んでアメリカではどんな風にやっているんだろうと思えるようになったこと、そして4月はじめに研究所を退職して嘱託となり、次の勤務までの時間ができたことから今回の研修を実現することができました。

Geoff2.jpg
Dr. Gottliebと。
Dr. Gottliebには2005年の札幌皮膚病理セミナーでご講演いただきました。



AcademyにはこれまでもたくさんのDrが日本から研修に行かれています。それでも、あまり興味を持っていても、情報がないという方もおられると思いますので、Academyの様子を少しご紹介したいと思います。僕も研修にあたって、最近Academyで研修した日本の先生から様子を伺うことができたので大変助かりました。



今回はメールで問い合わせたところJ-1 VISAを取るように言われJ-1を取得していきましたが、4週間と短期でもありVISAなしでもよかったかもしれません。1か月の滞在なので、Academyの近くの自炊できるApartment hotelに宿をとりました。Academyからも、頼むとHotels and accommodationsというリストをくれますが、結局ネットで自分で探しました。徒歩約5分という近いところです。家賃は高く、一泊100ドルちょっとします。研修費用は打ち合わせをせずに行ってしまい、行ってから話をしたのですが思ったより安かったです。


Ackerman Academyは、マンハッタンのミッドタウンにあり、エンパイアステートビルからも歩いて7-8分という場所にあります。大きなビルの2フロアを占めています。1つがlaboで、ここでは、特殊染色や蛍光抗体直接法、免疫組織化学染色を含む標本作製を行なっています。私達が普通いるのは10階で、たくさんの人が働いたり研修したりしています。リーディングルームはちょっとした講義もできるくらい広く、ここには27ヘッドのディスカッション顕微鏡があります。

EMPIRE.jpg
マンハッタンの夜景


fellow は、1年間のdermatopathology fellowshipをとっているDrが5人おられました。6月で研修をおわり、秋にdermatopathologyの資格試験を受けるそうです。僕が行ったのは4月末だったこともあり、皆、診断のレベルは高かったです。ほかにも、fellowshipが終わってからも時々きているDrもおられました。僕のような外国からの短期間のvisiting fellowも何人も来ておられ、それぞれ、1週間とか、2週間、1か月とかの期間で来られていました。期間の設定は自由にできるようです。また、SUNY Downstate Medical Center(State University of New York Health Science Center at Brooklyn)のpathologyのfellowもrotationで2週間ずつ、何人か見学に来られていました。

fellowの部屋には、机がひとり1つあって顕微鏡が各1台備えつけられており、visiting fellowも空いているところを使うことができます。PCは、ネットにつながった共用のものが2台おいてあり、自由に使えます。
医員は、5、6人おられて、彼らが通常の検体の診断をつけています。あと、事務のかたがたくさんおられます。DirectorのGottlieb Drは、通常の検体もみていますが、ほとんどはコンサルテーションケースの診断をしています。コンサルテーションケースは、世界中から送られてきていますが、やはりアメリカの病理医、皮膚病理医からのものが多いようです。日本からのものもありました。Ackerman Drは、週に2日ほどAcademyに来られます。お元気そうで、エネルギッシュに仕事をこなされていました。



1週間のスケジュール

月曜日と木曜日

Ackerman Drは、週2日、月曜日と木曜日(金曜日のこともあります)の午前中に来られます。
朝は7時!から、fellowのプロジェクトの打ち合わせや、Quiz、本の打ち合わせ、そして、講義のスライド作りなどをします。あいまに、Gottlieb Drがやってきて難解な症例の相談をします。
Quizは、Derm101.com というAckerman先生が主宰されているwebsite (http://www.derm101.com/) に掲載されるもので、2週間に一度5題ずつ追加されています。Ackerman先生はこのQuizに大変力をいれているようで、画像選びや構図などかなり丁寧に作成されていました。もうじき500題を越えるそうです。写真撮影はfellowがしています。Ackerman Drからは、ここでは論理的な思考を身につけること、そしてresistすることを学んで帰るようにと言われました。


昼休みは日によって違いますが、大体1時間半から2時間位あります。だいたい、近くへ食べに出たり、宿へ帰ったりしていました。fellowは忙しいと、ファーストフードをかじりながら、下読みしたりしています。


昼からは、Gottlieb先生のところに、医員のDrたちが、診断の難しいものを持ちよってきます。melanocytic lesionが多いですが、炎症性皮膚疾患なども結構ありました。例えば、Clark’s nevus (dysplastic nevus)でよいかthin melanomaの可能性はないかなどをディスカッションするのですが、最初は英語が早くて、全然ついて行けませんでした。また、ときどき、”これはfellowのために”と言って、診断が明らかでも珍しい症例を見せてくれます。

そのあとは、コンサルテーションケースを見ます。大体4時半くらいまで。

火曜と金曜日

8:30くらいから。朝の時間は日によって違っており、前の日の午後にGottlieb Drが明日は何時からやるということを言います。

火曜日と金曜日は1日中コンサルテーションケースをGottlieb Drが読んでいきます。melanocytic lesionが多くて本当に難解です。リンパ腫や炎症、付属器腫瘍、軟部腫瘍などもあります。shaveした検体が多く、Gottlieb Drはものすごく早くスライドを動かすので、なかなかついていけません。ややこしいのはあしたもう一回見ようと言って先送りにします。医員が持ってきた症例を見るときなどは、結局、結論が聞きとれなかったりすることも多いのですが、コンサルテーションケースは診断と所見をテープに吹き込むので、これをできるだけ聞きとるようにしていました。
pitcher役のfellowが標本を順に手際よくGottlieb Drに渡していきます。pitcherは前もって自分で診断をつけておかなければいけません。コンサルテーションケースは多い日は30例以上やるのでpitcher役は大変です。
施設によっては染色のよくない標本もあり、ブロックが送られてきていれば、リカットします。Academyで作成したHE標本はさすがにきれいで大変見やすかったです。一度見て、必要であれば深切りや特殊染色をします。免疫組織化学染色も行なうことがあります。
Gottlieb Drは、難解なものは、Ackerman Drの意見も聞いて最終的な報告書を作っていました。melanocytic lesionに関してはさすがに、アメリカは症例数が日本よりもずっと多いようです。

水曜日

水曜の午前中は、fellowはブルックリンにある、SUNY Downstate Medical Centerの皮膚科へ研修に行きます。これには、ついて行っても行かなくてもよいのですが、Academyにある標本をみることにして、今回は参加しませんでした。最後の週は行こうと思ったのですが、fellowから今週はあんまり勉強にならないから薦めないと言われ、道順も地下鉄の乗り換えなど結構複雑なこともあり結局行きませんでした。ちょっともったいなかったかもしれません。
この時間は、他のvisiting fellowと、study boxをみたり、コンサルテーションケースをみたりしていました。study boxは、inflammatoryとかadnexal tumorとかmelanocyticとかテーマが決めてあって100枚のセットにしてあるもので、簡単なものから難しいもの、珍しいものまでいろいろ入れてあり、とても興味深いものです。いままで見たことのあまりない疾患も結構含まれています。たとえば、CylindromaやMyofibroma、Dermatomyofibroma、Desmoplastic melanomaといった日本ではあまり見なかったものも数例ずつ入っていました。
コンサルテーションケースの下見は、最初は余裕がなくてできなかったのですが、途中からは夕方の時間も使ってできるだけ下見をするようにしました。やはり、自分で診断を考えておかないとぼーっと見ているだけになりかねません。結構、臨床情報の乏しいものが多く、臨床写真のついているものはまれでした。


水曜の午後は、unknown casesというのがあります。10例とか20例の標本が昼休みに配られて、fellowはそれぞれ診断、鑑別診断を書いて、あとでGottlieb Drがディスカッション顕微鏡で解説します。そのほか、もう少し手軽に、discussion顕微鏡でGottlieb Dr.が標本を見せて、診断を言うように順にあてるというのを1回に50例くらいを何度かやりました。それなりに難しいのが混ぜてあって勉強になります。
土日
休みです。


 だいたいこんなスケジュールなので、基本的にはコンサルテーションケースをみていることが多かったです。医員によるfellowへの講義とか、Soft tissue symposiumの症例をみんなでみるなどといったこともありました。最後の週にGottlieb DrとAckerman Drはイタリアへ講演に行かれたので、3日間、他のfellowと一緒に医員のDrのレギュラーケースの下読みをさせていただきました。医員のDrに意見を聞かれてdiscussionするのですが、これがなかなか楽しかったです。普通のケースを沢山見るのはやはり大切です。


最終日は、Gottlieb先生にfellowといっしょに美味しい昼食をご馳走していただき、楽しいひとときを過ごすことができました。


1か月の研修を終わってみて、dermatopathologyという分野を志すDrがたくさんいて、切磋琢磨して勉強していること、教育システムもしっかりしていて、なおかつ高いレベルにあることは、大変うらやましくおもいました。dermatopathologyを志す海外のDrと触れあえたことは大変刺激になりました。
アメリカには他にもdermatopathology fellowshipのプログラムを持っているところがたくさんありますが、日本でこのように多数の皮膚の検体の標本を見て診断能力をつけるというトレーニングのできるところは、札幌皮膚病理研究所のほかにはあまりないのではないかと思います。一方、2年間札幌で勉強してきた自分のレベルも確認することができました。


もうひとつは、やはり英語の壁は厚かったです。直接しゃべるときは、聞き返したり書いてもらったりすることができますが、それでもわからなかったり、言いたいこともうまく言葉になりません。普通のスピードでされる会話はちょっとしかわかりません。もともと、英語は得意ではないのですが、もうちょっとなんとかならんものかと思ってしまいます。1か月ではとても英語が上達というわけには行きませんでした。とはいっても、fellowのDrにも、医員のDrにも親切にして頂き、なんとか楽しく過ごすことができました。


最後に、マンハッタンはとても素敵なところです。毎朝、32丁目通りを歩いて行き、Academyのそばにでる屋台でコーヒーを買い、時にはベーグルも買っていきました。コーヒーは薄いのですが、クリームチーズをはさんだベーグルは美味しいです。帰り道ではレキシントン通りからは、クライスラービルの尖頭にあかりが灯ってとてもきれいですし、エンパイアステートビルの上の方の色とりどりの照明もみえ歩いているだけでも楽しくなります。近くのスーパーで珍しい食材と安いビールを買って自炊したり、デリでおかずを買って帰っていました。また、32丁目通りには、安くておいしい韓国料理の店がたくさんあり、Academyの近くにはインド料理、タイ料理、チベット料理などさまざまなよいレストランもあります。メトロポリタン美術館、自然史博物館や近代美術館、セントラルパーク、ブロードウエイなども近く、見どころもいっぱいです。地下鉄も随分きれいになって安心して乗ることができます(深夜は危ないと思います)。


研修は短期間でも受け入れてくれるようですので、短期でも長期でも、観光を兼ねてでもよいですので皮膚病理を志す方は、是非Academyを訪問されると良いと思います。海外の様子を見ることはいろいろな意味で刺激になります。
Academyではあまり基本的なことは説明しておらず、実践をとおして学ぶといった感じだったので、基本的なことから勉強したいかたは個人的には札幌皮膚病理研究所での研修をお薦めします。札幌で何ヶ月か(できれば3か月から半年くらい)研修して皮膚病理の基礎を身につけてからAcademyへ行くと、より多くのものを持って帰れると思います。
英語の苦手なかたは、その間に英会話の勉強もしておくとよいでしょう。特にmelanomaを含めmelanocytic lesionについては、いわゆるacral nevusやALMを除いて、アメリカの方が症例が多く、バリエーションも多いのでアメリカで勉強するのはよいことではないかと思います。僕も1か月で、たくさんの色素細胞性病変をみましたが、まだまだ消化できていないというのが本当のところです。是非また機会を作って研修に行きたいと思っています。
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