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研修医日記/医療法人社団 札幌皮膚病理診断科
Sapporo Dermatopathology Institute
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三重大学皮膚科同門会誌 掲載/仙波祐子
同門会誌 勢風 三重大学皮膚科同門会
第9号 水谷 仁 教授 開講十周年 記念号 (平成22年2月)
より許可をいただき掲載させていただきました。


<冬の札幌より>

 私は今、2009年10月より半年間の予定で、北海道札幌にあるAckerman記念札幌皮膚病理研究所に皮膚病理の研修に来ております。現在研修を始めて約一ヶ月半が経過したところですが、この同門会誌が発刊される頃には、研修も残り1, 2ヶ月に迫っていることと思います。今回わずかではありますが、この場をお借りして、札幌での研修生活についてご報告させていただきたいと思います。

 雪国に住むのは今回生まれて初めてなのですが、北海道の冬はやっぱり寒く、11月中旬の現在、すでに三重県の真冬並みの寒さです。寒い日は雪がちらついていて、外に出るときはダウンコートと手袋が必要です。あまりの寒さにどこへ出かける気にもなれず、おかげで勉強には身が入りそうです(笑)。家の中では常時灯油ストーブを焚いているので、屋内は暖かいのですが、そのかわり空気の乾燥が激しく、この時期にして“かかとのひび割れ”に悩んでいます。。。先日、皮膚科医になってから初めて、薬局に「ハンドクリーム」なるものを買いに行きました。ワセリンやウレパールなど安い薬だと思っていましたが、薬局で買うとそれなりに結構高くて、ビックリしました。こんなことなら、大学にいる間に、いっぱい軟膏やサンプルをもらってこればよかった、、、と後悔しています。

 冒頭から話が脱線してしまいましたが、研究所の一日は朝7時半のリーディングから始まります。早起きは苦手の私ですが、札幌に来てからは毎朝6時に起きています。毎日朝7時半から夕方5時まで、お昼休みの1時間を除いて、ひたすら標本を見続けます。現在一日に見ている標本数は100件前後で、今年一年で4万件に届きそうな勢いです。私が大学で一年間に見た標本は700件程度だったことを考えると、1週間で1年分の標本を見たことになります。とてつもない量です。珍しい疾患にも遭遇することができて、この一ヶ月でも、螺旋腺腫(Spiradenoma)、脂腺腺腫(Sebaceous adenoma)、デスモイドなど、教科書でしか見たことのない疾患を実際にみることができました。今は木村先生がお一人ですべての標本を診断し、レポートを作成されています。一緒にただ顕微鏡を眺めているだけでもこんなに疲れるのに、木村先生は本当にどれだけ大変だろう、、、と思います。そんな中でも木村先生は、いつも疾患の解説や診断のポイントを私たちに講義して下さいます。週末も標本を読みに出勤されている木村先生の後ろ姿を見ていると、このような忙しい状況の中でも研修の受け入れを続けて下さっている木村先生に、申し訳なくも大変有難い気持ちでいっぱいになります。基本的に標本を見るのは好きなので、毎日とても楽しいのですが、今一番悩んでいるのは、肩こりと頭痛です。手持ちのロキソニンがなくなったら、また薬局に行って“バファリン”か“セデス”でも買わないといけないかも、、、。最近、エステの肩こりマッサージ、というのに一度行ってみたい誘惑にかられています。

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 夕方リーディングが終わったあとは、頭も目も飽和状態になってフリーズしているため、文献のコピーや物書きなどのちょっとした事務作業をして頭を休めます。近頃は、美容と健康に配慮して(?)早めに夕食を食べる日も多くなりました。ゆとりがある時は、一緒に研修している先生とごはんを食べに行ったり、論文などの文献を探しに図書館に行ったりすることもあります。こうして少し休憩した後、翌日朝見る標本の下見をして、それから今日見た症例の中で診断が難しかった症例や典型的な稀少症例を、教科書を見ながら見直しています。このような診断困難例や稀少症例は日々バーチャルスライドに取り込んで保存される仕組みになっていて、以前研究所で研修をしておられた先生方もインターネットで見ることができるため、毎日ネット上でディスカッションがなされています。最近はまず自分で症例を見て、所見と診断、鑑別診断を書いておき、あとでネット上のディスカッションを見ながら、自分の所見の取り方はどうだったか、解釈や診断は合っているかを確認するようにしています。最初に先入観を持たずに正直に組織所見を取る大切さと、その所見をどう解釈し病理診断に結びつけていくかというプロセスで必要となる、多くの疾患の病理組織像に関する知識(典型的組織像とバリエーション、Diagnostic clue)を学ぶ必要性を痛感しています。細かい組織所見や診断の根拠を言葉にするというのは、結構手間がかかり頭も使う作業で、診断困難例が多かった日は全症例できない日もありますが、とてもいい勉強になるので、是非続けていきたいと思っています。家に帰ってからも、バーチャルスライドを見て所見を書いたりしているうちに、早い日は夜10時半くらいから眠たくなり、だいたい夜12時前後には夢の中、、、で札幌の一日が終わります。
 病理診断をする上で、私が特に難しく苦手と思っている三大病変に、メラノサイト病変(Melanoma or not)・リンパ腫(Lymphoma or not)・軟部腫瘍があります。診断困難例シリーズにも、よくこれらの病変があがってきます。難しいメラノサイト病変ではやはり医師により診断のばらつきが多い印象があり、紅斑期の菌状息肉症では、炎症か腫瘍かを含めて、病理診断の再現性に悩んでいます。軟部腫瘍については、自分の経験不足と勉強不足も感じています。

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 土日はまずゆっくり寝て、家の掃除や買い物をして、あとは時間のある時に、木村先生からいただいたプロジェクトの準備や宿題の調べ物をしています。調べ物の一部は、研究所ホームページ上にある皮膚病理倶楽部のブログ「皮膚病理覚え書き」にアップされ、多くの方に読んでいただけるようになっています。皮膚病理倶楽部への入会は無料ですので、まだ入会されていない先生方は是非ご入会下さい。「今日の症例」のコーナーでは、稀少症例の典型像と解説も見ることができます。論文のテーマになりそうなプロジェクトも、この一ヶ月半の間にすでに3ついただいています。やりたいこと&やらないといけないことはいっぱいだけど時間には限りあり、、、というのはどこにいても同じですが、後で振り返った時に後悔しないように、一つ一つ今できることを積み重ねていきたいなと思います。
 これから真冬にかけてどこまで寒くなるのかやや不安ですが、風邪やインフルエンザにかからないように、また昨冬のように滑って骨折することのないように、気をつけながら充実した研修生活を送りたいと思っています。

 最後になりましたが、慢性医師不足で苦しい医局運営の中、研修のチャンスをお与え下さった水谷教授と医局長の磯田先生、また留守中の代行をはじめ様々な意味でご迷惑・ご不便をおかけしている医局の先生方に、改めてお詫びとお礼を申し上げたいと思います。この機会を最大限生かし、一つでも多くの症例を、自信を持って正しく診断できるようになって、また4月春が来る頃に三重県に戻りたいと思っています。

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